お知らせ
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作成日:2010/10/04
簡単な経営分析



先月のレポートにて、冒頭政府、日銀の円高、株安に対応した経済対策と追加の金融緩和措置について触れましたが、今日現在の日経平均は9,369.35円、ドルは83円台と、日本にとっては非常に厳しい状況が続いています。27日の日経新聞では、政府が日銀に対して、市場に潤沢な資金を提供する「量的緩和」を含んだ、思い切った追加緩和策を早期に検討する、といった記事が載っていました。6年半ぶりに行った単独為替介入に続き、政府、日銀が一体で円高とデフレを阻止する狙いですが、現況を考えると不透明の要因が多く、かなり難しい判断を迫られるという見方が一般的です。遅い対応のしわ寄せが、どんどんと表面化している気がしますが、早く対応しないと更なる不況感、雇用不安を増大させることになってしまいます。「長引く円高、企業圧迫」、いつまでこういった記事が続くのでしょうか。

さて、今回は決算書を見る上で、最優先にチェックして頂きたいポイントについてまとめてみたいと思います。厳しい景気が続く中、取引先の財務内容の判断は今まで以上に重要になってきました。皆様方は新規取引先や既存取引先の財務内容を見る時、どういった点にご注意されていますか?黒字かどうかだけで取引先の優劣を判断してはいないでしょうか?

取引先の財務判断を行う場合、先方が上場会社、非上場会社に限らず、判断材料は決算書、主に損益計算書、貸借対照表及びキャッシュフロー計算書といったものになります。上場会社はネットで簡単に収集できますし、非上場会社もリサーチ会社を利用すれば、有償ではありますがある程度簡単にデータ収集は可能です。そのデータをベースに財務分析を行っていきます。

 私の場合、まず確認するのは損益計算書とキャッシュフロー計算書です。利益が出ているか、その裏付けとなるキャッシュはゲットできているか、という点を確認します。会社によっては、利益は結構出ていても、キャッシュフロー計算書はマイナスになっていることが少なくありません。一見しただけでは、何故利益は出ているのに、キャッシュがマイナスかは判断できませんが、まずはどれだけお金を稼ぐ力があるかを見るために、利益の裏付けとなるキャッシュフロー、特に営業キャッシュフローがどれだけのプラスになっているかの確認が重要です。上場会社は当然キャッシュフロー計算書を開示していますし、非上場会社でも、リサーチ会社の方で作成していることも多々あります。まずは利益とキャッシュのバランスを確認して下さい。

 次に、貸借対照表の数字を一部の経営分析の公式に当てはめて、以下の様な順番で分析していきます。「手元流動性」→「当座比率」→「流動比率」→「自己資本比率」という順番です。手元流動性とは、(現預金+すぐに現金化できる資産+すぐに借りることのできる与信枠)/月商(売上高÷12)で計算できます。すぐに現金化できる資産や与信枠については、決算書だけでは判断できない場合も多いので、その時は現預金だけで構いません。月商のどれ位のお金を持っているかを見る指標ですが、大企業で1ヶ月、中堅企業で1.5ヶ月、中小企業で1.7ヶ月を持っていれば安全です。まずはこの指標を使って、短期的にどの程度の余裕があるかを調べて下さい。

 「当座比率」とは、当座資産(現預金+有価証券、売掛金及び受取手形−貸倒引当金)/流動負債×100で計算できます。当座資産とは、流動資産の中にあるいざという時に現金化し難い在庫等を差引いたものです。要するに流動負債といった1年以内に支払わなければいけない負債と比べて、当座資産といった現金もしくは現金化し易いものをどれ位持っているか、を現したものです。一般的には90%以上あれば、短期的な安全性は問題ないと言われています。

 「流動比率」とは、流動資産/流動負債×100で計算できます。流動負債、つまり1年以内に支払わなければならない負債と比べて、流動資産、つまり現預金及び1年以内に現金化する予定のものをどれ位持っているか、を現したものです。

 簡単に申し上げると、まずは手元流動性を見ることで、急に倒産したりしないかどうかといった超短期のリスクを測り、その後少しずつ分析する対象を広げるために、当座比率、流動比率といった指標を使って、短期的な安全性を図るといった流れで分析を行います。

 最後に自己資本比率を計算します。自己資本比率は、純資産/総資産×100で計算できます。この指標はかなり一般的になり、最重要比率と思われていますが、財務分析を行う際には上述した様な指標の方がはるかに重要です。会社は負債が返せないから倒産します。自己資本比率が良くても、必ずしも会社にお金があるかどうか解りません。まずは手元流動性をはじめとした短期的な資金の余裕度を測り、当座比率、流動比率といった指標を使って分析対象を広げ、その後に自己資本比率の確認を行って下さい。自己資本比率が良くても、倒産してしまった会社は数多くあります。自己資本比率はあくまで中長期的な安全性を示すものです。それだけ手元資金が重要だということですね。

 経営分析を行うにあたって、たくさんの経営分析指標があります。その手の本もたくさん発刊されています。それ自体有意義なものもありますし、できれば覚えておきたいものもたくさんあります。しかしまずは今回ご紹介させて頂いた指標が最も重要です。要するに短期的な安全を測る指標が最も大事だということです。いくら成長性や将来性があろうと、自己資本比率が良かろうと、目の前の資金がショートしてしまい、倒産してしまっては何にもなりませんから。

 この他の経営分析につきましても、折を見てご紹介させて頂きたいと思います。
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